第 10 回

 1日が終わる頃、いろいろな食べ物を店の前に売りに来ます。バイクや自転車の荷台に、菓子パンやくだもの、アイス、スルメ等々がのっています。「今日はたくさん残っちゃったね」とか、「おー、今日はカイディーだね」とか、近所のおばさんの井戸端会議状態です。私も時々おしゃべりに加わって市場調査(?)をします。
まず、出身地。これはタイとは限りません。バングラデシュ、ネパール、ミャンマー、ラオス、カンボジア、それぞれ売る物が違います。豆類はインド人、ロティはパキスタン人が多いかな?そしてタイの地方の村の名前もいつくか覚えました。「虫屋さんが来たよ!」と従業員に声をかけると一番人気です。これは私が勝手に名付けた屋台で、イナゴ、アリ、サナギ、カエル等を売っているので『虫屋さん』と呼んでいます。この屋台は高級なものを扱っているらしく(?)私がみんなに買ってあげる時以外は、あまり人だかりがしません。くだものとかアイスなどは、「みんな欲しい?」と声をかけると「マイアウ」という子が何人かいるけれど、虫屋さんの場合は、いっせいに「アウ!」と声が返ってきます。

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赤アリの炒め物とかイナゴの唐揚げとか、みんな大好きです。どんな味がするのかは分かりません。食べた事がないので…。  「所変われば」と言いますが、本当にいろいろな食べ物があります。私は視覚的にちょっと変わったものは受け付けないたちなので、例えば日本でも、「どじょう」とか、「白魚の踊り食い」とかはダメです。中国の「サソリの串焼き」や「とかげの開き」もダメです。ベトナムの「ホビロン」も×、ヘビも×。でもその土地の食べ物は比較的なんでも食べるので、外国暮らしは苦になりません。ただ、カエルを食べるところまでは知っていましたが、「おたまじゃくし」がおいしいと言われた時は、驚きを通り越して笑ってしまいました。かわいそう…。でも従業員は真面目な顔で言い張ります。「あれはおいしいのだ!」と…。地方の村では、確かに大切なタンパク源のひとつなのかもしれません。命を繋ぐために命をいただく。食事と言うのは本来そういうものなのですね。時として忘れてしまいます。私たちが生きる為に、どれだけの犠牲があり努力があるのか。(焼肉屋の私が言うのもなんか変ですが。)でもせめて、食事の前に両手を合わせて「いただきます」、そして食事の後に「ごちそうさま」。この意味をしっかり子供に教えたいと思います。
 今日もまた、1日の終わりにスルメの屋台が来ました。干したイカを、洗濯バサミできれいに留めてあります。小さいのは3枚10B、Mサイズは1枚10B、Lサイズは1枚20B。時として立派なXLサイズがあり、これは50B!(でもこのサイズはめったにありません。)火であぶって、それからが必見!ギザギザの2本のローラーの間に、スルメをはさんでコロコロと手動でまわすと、スルメがペタンコになってちぎりやすく食べやすい。私はこれが楽しくて時々お兄さんに頼んで、クルクル、コロコロとまわさせてもらいます。店の前のうす明りの中で、スルメをペタンコにして喜んでいる私は、かなり『変な日本人』だと思います。

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いろいろな屋台が来て、これらの食べ物をこの国で普通に買って、普通に食べるまでには何年かかるのでしょう。私は今だに「あれは何だ!」と屋台が来るたびに飛び出して行きます。
 従業員の子たちにまじって、あーだこーだと言いながら過ごすこのひと時は楽しいです。コンビニで一人買い物するより、ずっとずっと楽しいです。