美しい家族の正しい外食

 とあるラーメン屋さんでの出来事です。2人の子供を連れたご夫婦が、ひとつのテーブルに座っていました。子供は幼稚園児と小学生位。私がまず第一に驚いたのは、家族4人がわいわい楽しそうにおしゃべりしていることです。今どきのご家庭は、まず坐るなりスマホを取り出してメールのチェックかゲームか、とにかく両親も無言でいることが多いのです。子供も少し大きくなると皆、ゲーム機を持っているのが当たり前。かくして静かなムードで食事となるわけです。そこで、前の家族に話は戻りますが、「ねぇねぇ聞いて、○○ちゃんが…」と、小さな子がお父さんに話しかけ、お母さんはメニューを広げて上の子と注文選びににぎやかで、私は感激してしまいました。ほんとはこれが正しい外食の姿だよなあ…。
 私たちの子供の頃は外食というのは大イベントでした。デパートに行くということは即ち『おでかけ』の王道で、お昼はデパート内の大食堂でカレーとかを食べるのが心躍るひと時でした。子供心に緊張したり、はしゃいだり。
 それが今どきの子供たちは、冷静で外食の感激というものは無いみたいです。時代ですかねぇ…。
それでもせめて、食事をする時くらいは家族の顔を見ましょうよ。ケータイから目を離さないお父さん。スマホで写真を撮るのに夢中のお母さん。家族で食事のできる時間なんて、あっという間に過ぎてしまいます。今ですよ‼
 その家族は、小さな子がお店の本棚から本を一冊持って来て「読んで!」と、お父さんにせがんでいました。その時、本がコップに当って水がこぼれてしまい、タイ人の従業員がテーブルを拭きに来ました。お母さんが「コップンカー」と言い、お父さんが「おねえさんにありがとうは?」と、子供に言い、私はそれを見ていて思わず『あなたはえらい!』と心の中で叫びました。今どき、なかなかないですよ。 私は感激して、一緒にいた友人に「見た?見た?なんて素敵な家族!日本人もまだ捨てたもんじゃないよねえ…!」と騒いでしまいました。すると友人が「あんた、心が病んでるねえ。こんな当たり前のことをそこまで喜ぶか?そんなにつらい日をおくってるの?」だと…。 でもね、ほんとに当たり前の『ごめんなさい』と、『ありがとう』をちゃんと聞かなくなって久しい気がする。その家族が食事を終って帰る時に「ご本はちゃんと戻して」と言うお父さんの声。小さな子がチョコチョコと本棚へ歩いていく姿に思わず抱きしめたくなりました。この子はまっすぐに育つんだろうなあ…。と思いながら。「いい家族だなあ…」とニタニタしていると、友人いわく、「あんたを感激させるの簡単だね。単純な奴」
 それでもいい。この家族がうちの店に来たら、おばさんは張り切ってサービスするからね!