第 14 回

 またまた新手のサギか?先日、一人のタイ人男性がうちの店にやってきました。昼の時間。「私はT社のSUZUKIさんのドライバーです。ここへは何回か来たことがあります。実は2時に空港に迎えに行かなければならないのに、すぐそこでバイクと事故を起こしました。おまわりさんに300バーツを渡さないといけないのにお金がありません。すぐに返しに来ますから300バーツ貸して下さい。」私はタイ語が分からない振りをして従業員に応対させていました。彼はカシコーンのカードを出して「これを預けます。」と言うのですが、従業員のPが、「それで今、お金を下ろしてくれば?」ともっともな話。「これには80バーツしかはいっていません。給料振り込みのためのカードですから。」と彼は今度は時計を外して「これを預けます。」と食い下がってきます。どうするかな、と私はだまって見ていました。「時計がないと仕事できないでしょ。」「じゃ100バーツでいいです。」と彼は値下げしてきました。

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まぁ、これはどう見てもまともな話じゃないな、と思いながら私は見ていました。彼はもうかなりの年で、なんだか必死の様子でしたから、お金が必要なのは本当でしょう。確かにうちにはT社のお客様はたくさんいらっしゃいます。でもドライバーの顔までは覚えていません。万にひとつ、この話が本当だとしたら。空港に迎えに行く時間が迫っていて、彼は警察に行く時間がない。お金で何とかしてしまおう…と考えたという事です。
 私はこの頃、色々なサギ師の人たちに、どういう訳か巡り合う機会が多くて、ちょっと疑ってかかる癖が付いています。でもうちの従業員は、「じゃ100バーツ貸してあげる。」と自分の財布から100バーツを取り出して彼に渡しました。あれれ…貸しちゃったよ。私は心の中でつぶやきながら彼を見つめていました。彼はワイをしながらそそくさと帰って行きました。タイ人は年寄りに優しいからなぁ…と思いながら、従業員のPに「たぶん帰って来ないよ。」と言うと、Pは一言、「タンブンだと思って。」彼女は分かっていたのです。分かっていて100バーツあげたのです。でもこの子にとって100バーツは決して少ないお金ではないはず。「じゃ、私があなたにタンブンしてあげる。」と私はPに100バーツ渡しました。私はタイ人のこの優しさに弱いんだなぁ…とつくづく思いました。自分の実力以上の事はしてあげないけど、やれることならなんとかしてあげる。チューアイカンの精神というものでしょうか。道端の物乞いの人にもお金をあげるタイ人は多いです。彼らが本当は組織化された物乞い集団だとしても、それを知った上でもタイ人はお金をあげるのです。かわいそうだからと。(子供や老人に対しては特に。)
 ナンダカンダと理屈を並べるより、「かわいそうだから」と単純に行動できるタイ人が私は好きです。先日知り合った在タイ40年という大先輩がこんな事をおっしゃっていました。「昔はタイ人に騙されたという話をよく聞きましたが、このごろ本当に怖いのは日本人ですよ…。」
 さて後日談ですが、あのドライバーは…?やはりお金は帰ってきませんでした。チャンチャン!

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