第 21 回

 従業員が足りない時、今現在働いている人たちに、「誰か友達に働きたい子はいない?」と聞くのは間違いだと教えられました。なぜか…?タイ人と日本人の違いが良く分かるこの話を、私は20年前に友人から教えられました。
 日本人は自分の働いている場所を紹介するのだから、まず自分が満足していない所は紹介しない。友人に対して責任を持って紹介したいと思うから、「こんな嫌な所だけど、どう?」とは言わないでしょう。そして又、自分の職場に対する責任として、自分が自信を持って紹介できる友人しか連れて来ない。後々「こんなヤツを紹介して…。」と言われたくない。「さすが君の友達はきちんとしている。」と評価される事が、自分の為にもなると思う。これが日本人。対してタイ人はどうか…?友人(日本をよく知っているタイ人)いわく、能力が自分より上の友達は紹介しない。比べられたら嫌だから。友達の方が早く出世したら面白くない。なるほどねぇ…。正直、分かる気がする。自分が辞めたい時、友達を連れてくれば辞めやすくなる。後の事は友達の問題。ウーン…。これはどちらがいいとか悪いとか言う問題じゃありませんね。
 20年も前の話だから、日本人もタイ人もかなり様変わりしているところもあるでしょう。けれど基本的にはこの違いが私には分かります。小さな店ですが、長いことやっていると、いろいろな子たちが出たり入ったりします。Aの紹介で入ったBが、不始末をして辞めてもAはマイペンライです。大人なんだからと思えば、採用した私も辞めたBもそれぞれ責任がある訳で、紹介者のAには関係ない…それがタイ式。私は全てを受け入れようと思います。なぜならここはタイだから。ただし、自己防衛策もしっかり持っているつもり。例えば面接に2人、3人と連れ立って来る子は採用しない。なぜなら辞める時も一緒。大人になりきれていない子が多いから。これは日本式。夫婦はどちらか1人しか採用しない。とにかく夫婦の場合はトラブルが多い。これも日本式考え方。
 私はタイが好きです。なんだかんだグチを言っても、これ程長く住んでいるところを見ると、やっぱり合っているのだと思います。ただ、自分に課している事があります。それは日本式をタイ人に押し付けないこと。洪水の騒ぎの中で、「タイ人は笑っていた。」「子供が泳いでいた。」「楽しそうに水の中を歩いている!」そんな声が聞かれます。いいじゃないですか。それともみんながみんな、暗い顔で涙を流さないといけませんか?タイにはタイの、日本には日本の歴史があります。それぞれのやり方で乗り越えて来たのです。洪水の中で笑っていようとVサインを出そうといいじゃないですか。これがタイ式だとしたら、受け入れればいいと思うのです。
 フジスーパーの前で、あるテレビ局がインタビューをしていました。私は「今のところ、生活になんの不自由もありません。」と答えたのですが、見事にカットされてしまいました。「不安です。」「とても困っています。」そんな声ばかりが放映されていました。暗い話題の時には、それらしい顔しないと!と友達に言われました。これだもの。日本側の家族や友人が心配して電話してくるはずだ…と納得。そんな騒ぎもなんとなく落ち着いてきて、と言うよりも「来るぞ、来るぞ」と身構えている事に疲れ果てて、ちょっと中休みなのでしょうか。なにはともあれ、日本人とタイ人の違いを、またまた感じた洪水騒ぎでありました。

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