第 30 回

 タイにこれだけ長くなると、懐かしい再会が何度もあります。ある日、若い大学生くらいの男の子が、うちの店に入って来ました。「こんにちは!お久しぶりです。覚えてますか?」と言われて、ハテ、誰だったかしら…と考えても分かりません。「僕、小学生でしたから…。」という男の子を見ていて思い出しました。10年位前に、ご家族でご来店下さった平井さんちのショウタ君!でもでも、こんなに大きくなって…。そりゃ分らないわ。彼を見上げる私の目がウルウルしてしまいました。大人の10年はたいして変わらない。まぁ、老けたなァと思う位ですが、子供はすごい!あんなにかわいかった子が、こんなに大きくなって…。人様の子でも、なんだか胸が一杯になってしまいました。タイで育った子は素直な子が多いと思います。 以前、ある喫茶店でひとりお茶をしていた時、中学生くらいの男の子と女の子たちが騒いでいました。日本人学校かインターか分かりませんでしたが、とにかくうるさい。でも、タイ人の従業員は注意できません。ここでおばさんの出番か…、と思った時、その子たちのうしろの壁に一匹のゴキブリが…。彼らはそれに気付きパニックにおちいりました。キャアキャアと逃げまどい、情けないったらない。そこで、私はサンダルを片方脱いで手に握りしめ、つかつかと近寄りました。そして素早く、パシッとゴキブリをやっつけました。(タイのゴキブリは運動神経がニブイ)「おー!!」と彼らは叫び、そして一斉に拍手です。「すっごーい、かっこいいー!」やっぱり子供。かわいいもんです。「おばさんをなめちゃダメよ!だてに年取っていないんだからね。それより君たち、少し静かにしなさいよ。青春してるのは分かるけどね。」すると「ハーイ!」といいお返事。かわいい!でも、それを友人に話したら「あなたダメよ、そんなことしたら。日本だったら殺されちゃうかも…。とにかく、今の子はキレやすいんだからね。」と言われました。タイにいる子たちは素直でおっとりとしています。親に対して「ブッ殺すぞ」なんて間違っても言わないでしょう。ショウタ君は「妹もHATTORIを懐かしがって、いつも話しています。写真撮ってもいいですか?」とパチリ。そして次の日、わざわざ写真を持って来てくれました。大学の卒業旅行だそうです。本当にいい子に育ったなぁ…としみじみ。この身は10年で老けただけ。成長なんてしなかったもんなぁ…。ちょっと悲しい。 先日は、やはり10年位前にご家族でよく来て下さったSさんが、こんどはご夫婦ふたりで再駐在だと、挨拶に来て下さいました「あの頃は4人家族でしたが、今は子供も大きくなって、それぞれ生活しています。二人だけの駐在ですけど、よろしく。」とちょっと寂しそうに仰いました。「10年ひと昔」と言いますけど、本当に生活は変わってしまうものですね。それに引き換え、私は相変わらず、従業員もほとんど変わらず、なんとも平和な毎日です。「ここが変わらなくて本当にうれしかった。」とショウタ君が一言。おばさんも嬉しかったよ、君がこんなに大きくなって、また来てくれたこと。そして願わくば、君が就職して、結婚して、家族でタイ駐在…、なんて実現出来たらいいなぁ。その頃、まだ私が生きていれば…の話だけど!  (はっとり)

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