第 43 回

 タイの抜けるような青空に、真白い雲がモクモクと立ち上っているのを見上げ、いつも思います。「あ~、夏の空だなァ…」子供のころ、夏休みになると、こんな空を毎日見上げたものでした。ワクワクしました。日本では、季節によって空が変化するのをそれ程気にも留めなかったけれど、ここタイの空は本当にいつも夏の空です。
 どんよりとした空は嫌いです。シトシト雨も嫌いです。メリハリのあるタイの雨が好きでした。でもこのところ、なんだか日本の梅雨を思わせるシトシト雨の日が続いていて、気分が暗いです。
 今読んでいる本に、こんな一節があります。「不思議に秋になると、秋だなあと感じやす。ね、ね、あの鰯雲をどういう訳か別れ雲とも言うんだそうです」「別れ雲? 寂しい名前だこと」「あい、胸の奥がつーんとなるような名前ェですよ」――宇江佐真理という作家の「別れ雲」という時代小説です。なんだか心がほっこりとしてきませんか? 私は活字ならなんでも好きですが、特に江戸時代のほんのりとした人情ものが大好きです。
 ところで、時代小説には必ず『オバタリアン』なる人種が出てきます。昔から、日常にはなくてはならない存在なのだとしみじみ思います。江戸時代には、長屋の真ん中に井戸があって、そこがおかみさんたちの社交場だったわけで、お節介をやいたり、うわさ話をしたり、助け合ったり、賑やかな場所だっただろうなァと思います。魚屋のとみさんとか、大工の源さんのおかみさんとか、髪結いのしげさんとか。
 きのう、ベトナムから帰ってくる飛行機の中で、インド系ベトナム人(?)のオバタリアン軍団に囲まれました。私だって立派な(?)オバタリアン資格保持者だけれど、なんたって多勢に無勢。一人おとなしく観察する側にまわりました。私のまわりのインド系ベトナム人のご婦人たちも、そりゃあうるさいくらいおしゃべり。顔はインド人なのに、読んでいる新聞はベトナム語。サリーは着ていなくてとにかく派手。原色好き。ヒョウ柄好きは世界共通みたい。髪はチリチリにパーマをあてて、爪にはバッチリ、ネイルアート。しかも、8個指輪(親指以外は全部金の指輪)をはめていました。お金持ちなんだなァ…。食事のあとは、バックからくだものやお菓子を取り出し、「あんた、これ食べる?」「じゃ、これと交換して」みたいな会話。やっぱり食べるのが大好きみたい…。オバタリアンは世界のどこにでもいる。これは間違いないと思います。人種を問わず、集団である。きついパーマ。どちらかというと太っている。ヒョウ柄好き。とにかく派手。荷物が多い。バックには食べ物が入っている。そして、気のいい人たちである。なによりも明るい性格。私のこの日の観察結果は以上です。おかげさまで楽しいフライトではありました。さて、ヒョウ柄の洋服を買いに行こうっと…!  (はっとり)

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