瞬間即効性の睡眠薬

 友人が、夜眠れないからと薬局で睡眠薬を買いました。その薬が強すぎたのか、体に合わなかったのか、その晩、心肺停止状態になってしまったのです。幸いにもたまたま訪ねてきた友人がいち早く病院にかつぎこんで何とか一命をとりとめました。睡眠薬といえば私も経験があります。また旅行記のようになりますが、アメリカから南下したメキシコの東側にベリーズという小さな国があるのをご存じでしょうか。首都はベルモパンといって、人口は36万人ほど。 美しい海と珊瑚礁に恵まれ、「カリブ海の宝石」と呼ばれている国です。私はその時までそんな名前の国があるとは知りませんでした。知られていないので旅行者はほとんどが素通りです。どんな国なんだろうと好奇心からちょっと行ってみたのが間違いでした。ある村のホテルに泊った時、嫌な予感がしました。以前にこの部屋を使用したのは何年前だろう…?と思えるようなカビ臭い湿った部屋でした。一夜明けて、私の体にすごい数のジンマシンが現われていました。その時はジンマシンだと思っていたのですが、後でアメリカ人の旅行者に聞いたところ、南京虫だということが解りました。普通に清潔な暮らしをしていれば、お目にかかる事はないはずの虫です。かゆくてかゆくて、全身を掻きむしって、眠ることもできなくなりました。次の朝、フラフラしながら村でただ一軒の薬屋さんに飛び込んで状況を説明すると、『それはレモンか、オシッコを塗っておけばよろしい』と言われました。???それ以上の会話をあきらめて素直にレモンを買いました。たしかに傷口にレモンがしみて一時的にはかゆみがおさまりますが、やはり猛烈なかゆみがぶり返します。また次の日に薬屋さに行き、「やっぱりかゆくて眠れない!」と訴えました。するとおじさんはウンウンとうなづきながら『眠れないのはよくないね、これを夕食後に飲みなさい』と、白い錠剤をくれました。ホテルで夕食をとって薬を飲みました。「これでかゆみがとまりますように…」と期待しながら。
 すると、あっという間にボーッとしてきて、フォークを持っている事さえできないくらいに体がいうことをきかなくなってきました。これはマズイぞ…、部屋へ戻らなければ…と食堂を出ました。エレベーターなどはありません。映画「呪怨」のように、よつんばいで階段を這うようにして一歩一歩、部屋に向かいました。遠い。やっと部屋にたどりついてドアを閉め、ロックしたところで眠りに落ちました。次の朝、目ざめると、ドアノブに片手をのばしたそのままの状態で床に転がっていました。生まれて初めての睡眠薬が効きすぎたのでしょう。それ以来、私は一度も睡眠薬を飲んだことがありません。そして旅先で薬屋さんにお世話になろうとしたこともありません。
 南京虫に睡眠薬。どうしてこんなことになったのか、今でも解りませんが、南京虫→かゆい→眠れない→睡眠薬、という図式はまんざら間違いでもないのかなあと思ってしまった昔の自分が怖いです。先日、睡眠薬で危ない目にあった友人は元気になりました。薬という物は、その国によって薬効成分や使用方法が違ったりするので、よくよく気を付けて使用しなければいけないと、改めて自分に言い聞かせる出来事でした。  (はっとり)

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