ベジタリアンご来店!

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 日本にいると、食べ物に関して好き嫌いはあっても、何人かで会食の時にそれ程もめることはありません。けれど、ここタイでは国際色豊かな集まりがあると、けっこう気を使います。「彼は牛を食べない」、「彼女はブタを食べない」、うちの店でもよくそんなお客様がいらっしゃいます。そんな時、折り合いをつけてトリ肉を食べる事になったりします。トリ肉であれば、ほとんどの場合にみんなで食べられます。うちは焼肉屋ですから、牛や豚がダメとなるとけっこうキツイのですが、トリ肉やエビ、イカで乗り切れるのが救いです。日本では牛を食べない人が焼肉屋に来ることはまず無いでしょう。
 ある日のことです。一人のタイ人男性が入店されました。ランチタイムだったです。(ランチタイムではメニューがある程度、決まってしまいます) 彼はきちんとした身なりで、高そうなケータイとノートPCを抱えていました。そして席に座ると、「僕は牛、ブタ、トリ、アニマルを食べませんが、どのメニューが美味しいですか?」(うっ!菜食主義者が焼肉店に…?)そんなことを言われて従業員は「????」と固まってしまいました。うちは焼肉屋です!説明をしても彼は席を立とうとはしませんでした。考えに考えて、「このメニューからこれを抜いて、代わりにこれを入れて、そうだ!「卵はどうですか?」すると彼は「卵はOKです」、私は少しホッとして「では、ゆで卵をトッピングにして…」、でもハタと考えました。アニマルがダメであれば、その卵は生命のもとだから本当は一番ダメなんじゃないか…? さらに彼は動物性の油もダメというので、麺も茹でてゴマダレをからめて野菜のナムルを乗せて、チャーシューの代わりに茹で卵を乗せて…。
 本来ならこんな面倒なことはしません。忙しいランチタイムは、いつも常連さんばかりでご注文のメニューはほとんど決まっているのですが…。しかし彼は何故か断れないオーラが漂っていたのです。 独りでもくもくと食べ、麺一本残さずにきれいに食べきって、食後のアイスコーヒーをを飲んで(嗜好品であるコーヒーはOKというのがちょっと不思議?)、静かに去って行きました。
 人にはそれぞれ好みもあるし、信念もあれば宗教もあります。食べ物も例外ではなく、日本ではそんなに経験することもないような場面をたくさん学びました。私は日本にいる時よりは物事に対して広く大きい解釈ができるようになったと思い、ちょっと自画自賛しています。でも、でも、入口に『BBQ』と大きく書いてある店に来て「アニマルは食べません」って、どう思います…? それでも、お客様は神様なんでしょうか…ね??
ごめんなさい、心がせまくて…。もし、彼が再度ご来店された時は、うろたえずに、もう少し知恵をしぼったメニューを提供できるように頑張ります!!
(はっとり)