嗚呼、我が青春のスパゲティ

 みなさん、スパゲティのナポリタンがイタリアにはないって御存知ですか?あれは、れっきとした「日本の味」なのです。しかも、昔なつかしい(私の世代では)青春の味なのです。いつか私の店でメニューにしたいとひそかに思いながら13年もたってしまいました。メニューにするとしたら名前は「わが青春のナポリタン」にしようとずっと心に決めていました。私が通っていた大学のそばに、夜はスナック、昼は喫茶店、みたいなパッとしないお店がありました。いつも友だちとおしゃべりしていたそのお店の名前はどういう訳か「スイス」といいました。あの頃のあの手のお店はきまってちょっとうす暗く、気むずかしそうなマスターがいて、ナポリタンとピラフは定番メニューでした。ナポリタンはアルミの楕円形のお皿にのっていて、必ずハムとピーマンとたまねぎがはいっていました。今みたいにアルデンテなんてしゃれた茹で方ではなくて(きっとスパゲティそのものが違うのでしょう)茹で過ぎたデロデロのスパゲティ。なつかしいなァ…。これを読んで「あったあった!」と同調してくれる御同輩、今度いっぱいやりましょうよ…なんて。
 まっ赤なケチャップが口のまわりについて、あまりロマンチックな食べ物ではなかったけれど、あの甘すぎる、ケチャップそのものの味を、今でも、思い出すと胸がキュンとします…。イタリア料理のお店にいってカルボナーラやボンゴレはあってもナポリタンはありません。友人の話では、名古屋のナポリタンには目玉焼きがのっていたとか。その友人がなつかしくてネットでナポリタンを調べてみたら、今、日本ではちょっとしたナポリタンブームなんだとか。それもナポリタン定食として、ごはんやお味噌汁のおかずにナポリタンがついているんですって!それは邪道でしょう。ナポリタンはおかずではなく、主食です!
 でも、そういわれてみれば、お弁当なんかでちょこっとすみに、ナポリタンが入っていることがありますよねェ。それはそれで、うれしかったりするから、まァ、いいか…。
 えーと、何が言いたいかというと、その懐かしのナポリタンに、ベトナムのホーチミンで出会ってしまったのです。(そのお店の名はLUNA CAFEだったと思います)それも、何と心くすぐるメニューでしょう。ナポリタンとピラフのハーフアンドハーフ。きっとオーナーは私と同じ思い出を持つ、あまり若くない(失礼!)方だと、すぐにわかりました。ホントにうれしかった!あのナポリタンと、あのピラフ。半分ずつがお皿に乗っていて、ここは私の店だ!これ、これ、この味だ!と心の中で叫んでいました。
 そして、その時、思いました。食べ物とは、人それぞれの人生がいろいろなかたちでつまっている。だから100人が100人全部、同じ感想にはならないんだって。このナポリタンだって、私と同じように懐かしくて喜ぶ人ばかりではないはず。だから、たくさんのお店があるんだなァ…。自分の店を探して、みんなあちこちさまよっているということが、なんとなく理解できました。私の店もいつかここは自分の店だと言われるようになりたいと思います。もう23年もたってしまいましたけど。何だか、まとまりがない話でごめんなさい。ホントは、結論として、わが青春のナポリタンを食べさせてくれるお店をだれかここバンコクでオープンしてくれないかなァ…なんて、虫のいいことを考えている服部でした!    (はっとり)