ちょーラッキー! プロンポン駅夜10時

 日本からの友人をホテルへ送ってプロンポン駅に着いたのは夜の10時。すぐ前を歩いていた日本人の女の子2人に声をかけられた。あきらかに旅行者。若い。「わァ~チョーうれしい。日本人ですかァ?」、「そうです」、「チョー、ラッキー!この辺にタイ料理のおいしい屋台はありますゥ?それとマッサージ!」、「ありますよ」、「マジ、ラッキー!てか、テレビでやってたじゃん、海外で日本人にサギられることが多いから気をつけろって。よさげな人でよかったじゃん!」—おいおい、おばさんはかなり人間が丸くなったと、この頃反省していたのだが、君たちには怒っていいよな?その口のきき方は何とかならないのか。「チョー」っていうのは友だちの中だけにしておきなさい。自分たちから声をかけておいて「よさげな人でよかったじゃん」はないだろう。「ここに住んでますゥ?」日本語になっているのか。「夜でもぜんぜん大丈夫じゃん、いいとこみたいでチョーラッキー!(またか)」
 もう一人の子も、「タイ料理の安い屋台どこ?近く?それと、安いマッサージ(安いってどういうことだ?)にイケメンマッサージ師ってホントいるんですゥ?」この質問に、おばさんは答えられない。ここが日本人の居住地域だとガイドブックに書いてあるのを君たちは読んで来たのだろうに。「わァ日本人たくさんいるじゃん! てか、日本人だらけ、キモイ!」—プロンポンとは、そういう場所なのだよ。なんだかまともに会話する気になれず、打ち捨ててズンズン歩いていると、子犬のように後をついてくるではないか。まぁ、遠い異国の地で、ご縁があった日本人同士、優しくしてあげようなどと仏心をおこした私。「じゃ、タイ料理の屋台とマッサージの安心なお店を教えてあげる」すると、またもや「イケメンいますゥ?」だと。私のほうが知りたいぞ!続けて「タイ人の男の子って、優しげでカワゆいじゃん、すぐ案内とかしてくれそうだしィ!」「てか、(このテカはいつから日本語になったのか)何か、かまいたくなんネ~?」「だよね~」—だんだん日本人でいるのがいやになりそうだったので、私は彼女らから逃げ出した。長いこと日本から離れている間に何がおこったのだろうか…と考えてみる。「チョー」とか「てか」などという日本語は昔からあったっけ?だいたい、円周率の3・14を3にしてしまった頃からおかしい。あ~、おばさんはため息をつく。オトコ探しているなんて、若い女の子が言うのか。そりゃ、「イケメン」と言えばきこえは良いけれど…。こんな夜遅く(10時過ぎは充分遅いと思う)に若い女の子がウロウロと何をしているのか、と心配するのは大きなお世話か、たぶんそうなんだろう。でも、「本当の怖さ」を知っていると、人は臆病になるものなんだよ…と、心の中で呟いてみる。アジアの夜をなめちゃいけない。

(はっとり)

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