場所が違えば、人も違う

 ある日、3人組のお客様が来店されました。一人はベトナムで働く会社員、一人はミャンマー、そしてあと一人はタイで働いている会社員という3人の会話です。
 「マッサージに行ってね、チップを渡したらこれっぽっちいらないって、突っ返されたよ。」これはベトナムで働いている方。「タイだったら、内心少ないと思っていてもとりあえずコップンカーだね。」と、タイで仕事をしている方。「ミャンマーはニコッと笑ってありがとうって受け取って、それからもっとちょうだいって手を出すなぁ、きっと。」ミャンマーに2年目の方。思わず吹き出してしまいました。同じアジアで陸続きでもこれだけ違う民族性なのだから、島国の日本人が海外に出たら本当に大変だろうと思います。私もベトナムで経験していますが「チップをいらない」と言うのでこの国はチップという制度がないのかと思っていたら「もっと多かったら貰う」と言われてしまいました。その国にはその国の歴史があって、長い時間をかけて出来上がった民族意識はそう簡単には変わらないだろうし、また、変えていいものでもないと思います。まして昨日今日、外からやって来た異国人にあれこれ言う資格もないでしょう。でも、変わらなければいけない事もあると思うのです。私は従業員に対しての接し方にいつも自問自答しています。「これは、日本式の押し付けではないのか?」「彼らにとって本当に必要な知識なのか?」そんな厄介な毎日に新しくミャンマー人の従業員が入ってきました。もう大変です!でも彼らは一生懸命です。ニコニコと笑顔がとてもいいです。それだけですべて許してしまうくらいに…!
 ある日、タイ人の従業員が鉄板を派手に床に落としてしまい、店中のお客様が飛び上がってしまいました。肉を焼く鉄板ですから熱く焼いてありますし、床はタイルなので音も凄かったのです。私はすぐに行って「まず、お客様に謝ってね」と言いました。日頃から私は従業員にこう言っています。「日本人はごめんなさいと謝ったら、まず許さない人はいない。だから言い訳するよりも先にごめんなさいを言いなさい。」タイ人の従業員はオロオロしてしまい、どうしていいかわからない様子。そこにミャンマー人の従業員が飛んできて、ニコニコ笑いながら鉄板を拾い上げました。「おっ、やるなおぬし…」と私は心の中でちょっと褒めてあげたのです。 が…、彼女は床に落ちた鉄板をそのままお客様のテーブルに戻したのです!おいおい、それはまずいだろう…とその時、古くから働いているお姉さんタイ人が「ダメでしょ。床に落ちたものは使えないのよ。」と慌てて新しいものと取り替えました。「ごめんなさい」と言いながら。もう15年も私と一緒に働いている彼女だって15年前は平気でトイレの雑巾でテーブルを拭こうとしたものです。(当時の彼女はそのことに何の疑問も持っていませんでした。)私は何だか胸がいっぱいになってしまいました。15年という時間はダテじゃないよなァ…。ちゃんと学んでくれている。変わっている。成長している。そして、それはもちろん私も一緒にという意味で。ハイ。私ハットリも学ばせて頂いています。さて、今日はどんなハプニングがあるのでしょう。それを楽しむくらいの心の余裕を持ちたいな…と私ハットリは思うのでありました。

(はっとり)

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