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悩みの種 『オカマの徴兵検査』

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オカマは兵隊になれるのか? 世界に類のない徴兵法

 解決の糸口が見えず長期化する反政府デモをはじめ、カンボジアとの国境紛争やタイ南部問題などで軍隊の出動が想定されているタイの政情。周辺諸国と陸続きで国境を持つタイ国は、ベトナムやカンボジア、ラオスが共産化するなかで自由主義体制を固持する国としての楔(くさび)となるために軍隊の整備と維持が欠かせない。従って、タイ人男性は18歳で予備兵名簿に登録され、21歳になると最寄りの区役所へ出頭し、徴兵検査を受ける事が憲法で定められている。
 現在、21歳になったタイ人男性は34万7831人(タイ政府調べ)。この内、10万865人を
今年の兵役者としてタイ国軍が求めている。具体的には、陸軍76100人、海軍16000人、空軍8774人。(計算が合わないが、タイ政府発表の数字なので気にしなくてよい。) タイ国軍の兵役期間は原則2年間だが、大学生は卒業まで徴兵が猶予され、期間も1年間に短縮される。また、兵役を自主的に志願した場合は兵役期間が半年に短縮される。入隊して数ヶ月後に週1日の帰宅が認められるが、それまでは兵舎での集団生活において軍事教練に励むのである。
 世界でも稀な例として注目されるタイの徴兵法は、毎年4月上~中旬になると21歳になった男性が各地の役場に出頭して身体検査を受け、くじを引く。タイの徴兵は抽選制なのである。今年は徴兵適齢者が約34万8千名に対して徴集者が約10万名なので、およそ24万8千名が兵役を逃れられる事になる。 身体検査に合格してから、抽選で引いた紙が黒色(バイ・ダム)だと兵役免除で、赤色(バイ・デーン)だと入隊して2年間の兵役となる。この時さらに、陸・海・空のいずれかの所属も決められるが、海軍は訓練が過酷なうえに服役囚が充当されているほどの慢性の人員不足もあって、最も敬遠され嫌われている。以前に「海軍行き」を引き当ててしまった若者がショックのあまり失神して倒れてしまったシーンは世界的に有名になった。
 当り(徴兵)を引いて泣き崩れたり、ハズレを引いて喜ぶ者を逆恨みして、その場でケンカを仕掛けたりと、会場は多くの見せ場に事欠かず、当日はお祭り気分で親戚や友人らも集まり、「赤」を引いたら一大事、「黒」を引くと喜びの大歓声があがる。アイドルや芸能人が訪れることもあり、徴兵のくじ引きはタイ国民の一大イベントとしてTV中継され、人気番組となっているのである。
 その中で最も注目を浴びるのは「ニューハーフ」の登場である。外見は女性でも戸籍上の性別は「男性」であり、現在のタイの法律では戸籍の性別を変える事はできず、18歳の時に予備兵名簿に登録されているため、徴兵検査を逃れる事はできない。しかし、どこから見ても女性である者に強く勇敢な兵士を望むのは非現実的であり、何よりも兵舎でなまめかしい姿でいられたら軍の風紀も乱れる恐れがある、との理由から「精神障害者」として不合格、徴兵免除としていた。ところが、今年からはニューハーフを『タイプ2』とする規定が設けられ、オペレーション(男性シンボルをカット)していなければ普通の男性として扱われるようになった。兵役逃れの防止策でもあり、中途半端なオカマはダメ、徹底してオカマになる覚悟なら許す、ということなのかもしれない。数年ほど前にゲイ権利団体が「徴兵失格証明書に精神障害者であると記載されているために就職やローンの審査で不利になる」と抗議したため、タイ国防省で徴兵判定に際しての統一した表現を考えた結果なのだろうか。徴兵検査の記録は恒久的に残り、就職に際しても徴兵検査証明書の提出が求められる場合がある。法的には精神疾患との理由で兵役対象から除外することに問題はないが、タイにはニューハーフがあまりにも多いために社会問題となっているのは確かだ。 軍の悩みをよそに今年も徴兵適格検査と抽選会場は甲高い歓声で大いに賑わっていた。