Vol,30

 出張で上海へ行ってきた知人が嘆いていました。有数の世界都市になった上海では、金曜の夜や雨の日になかなかタクシーがつかまらない。ところが、スマホ対応のタクシー配車アプリが現在大人気で、運賃にチップを上乗せして呼べば、タクシーがすぐに来てくれるそうです。これを知人の出張先で働く日本人社員が「救世主だ!」とか「上海ライフが楽しくなる!」と有頂天になっているのを見てとても苦々しく思ったそうです。
 そうか、それで空車のサインがでているのに止まってくれなかったんだな、と知人は気づきました。つまり、チップの有無や運賃をアプリ利用者が設定することによって、路上の客を無視して条件の良いほうへタクシー運転手が行ってしまうわけです。高齢者や幼い子供連れがタクシーに乗れず、スマホを持った若者が優先されることに知人は大変苛立っていました。
 「だからスマホなんかやる奴は身勝手なんだ」と、吐き捨てた言葉に、私も同調する部分があります。高齢者や障害者を置き去りにして、アプリで自分がタクシーに乗れやすくなったことを「救世主だ!」と喜ぶ頭の悪さに社会性という言葉は見いだせられません。ただの身勝手です。最近、上海の市当局はこの事態を重くみて、タクシーアプリの使用を時間制限にした様です。
 スマホで使用するアプリは多種多様なものが生み出されていますが、それらの謳い文句はみな『便利で手軽』です。利益だけを考えて作られるアプリには脆弱性ばかりが目につきます。「いろんな問題もありますが早く成熟して使いやすいアプリ&サービスになればいいですね」と、ネットでは擁護しますが、心と精神面を成熟させて高齢者や子供連れの方に気遣いすることのほうがもっと大切でしょう。