Vol,36

 仕事のメールが来て「この案件のご回答はASAPでお願いします」と締めくくられていた。PDFではないし、そんなファイルがあったかなあ?と思いつつ、「ASAPって何ですか?」と返信したら、「早急にということです」と返事が来た。最近なぜか無駄なやりとりが多い。特に、日本語で伝えれば済むことを略語やカタカナでぶつけてくる人が多い。それも特定の業種や自分の部署で使っている用語を平気で外部の人間に用いてくるからタチが悪い。「持続可能です」と言えば良いのに「はい、それはサスティナブルです」とくる。それに加えて「オーソライズ」とか「オルタナティブ」とか「エビデンス」とか日本語で言えば通じるものを気取って使い込んで来る輩はわざと意味が分かりにくくしているとしか思えない。「そのバジェットはオーソライズされているんですか」ではなく、「その予算は承認されているんですか」と言えば誰にでも伝わるのだ。日本人同士の会話なのになぜ、こうなってしまうのか。
 軟弱フォークから硬派に転向した某男性シンガーの新曲発表のコメントにこうあった。-『今の日本は欧米かぶれが酷くてやたら横文字を使ったりする。それは英霊が護った美しき国土と文化を破壊する行為だ。戦いに殉じた日本の男たちへの鎮魂歌』- なるほど、と期待を込めて曲名に目をやった。すると、『クローズ・ユア・アイズ』。
 思わず椅子から落ちそうになってしまった。なぜなんだ!日本語でいいんじゃないか!横文字かい!と、心が空しく叫んだ。
 日本語に置換することが難しい語はともかく、無駄に横文字を入れるのはどうなんだろう。もしも業界用語の場合は、その業界人以外には使わないのがマナーではないのだろうか。言葉は意志疎通の為の道具であり、国の文化である。なのに、日本人がどんどん自我を失っていくことが不憫でならない。