Vol,37

 私の実家は日本の真ん中あたりにある大きな川の上流で映画やTVのロケにもよく使われているSLの終点から近い。未だに、買い物に出かけたり家を留守にする時に玄関にカギをかけなくても泥棒の心配はないという、古き良き日本を残す田舎である。
 家から林道を車で2時間半走り、更に落石注意と猿の群れにご用心!の山道を歩いて3時間の所に世にも恐ろしい壮絶な吊り橋がある。
 南アルプスの雪解け水が永い年月を経て地上に湧き上がり、清々しい水のある所でしか栽培できない山葵(ワサビ)をここでは見る事が出来る。この、イワナや天然記念物のサンショウウオが棲む清々しい水が流れる渓流を挟んだ、山と山の間に架けられており、この吊り橋の諸元は何と高さ150mで長さも150mという恐ろしさ。都会からハイキングや渓流釣りに来た人たちが怖がって渡れないのが高さ10m位だから、その恐怖たるや如何に。
 この吊り橋は営林署の職員が山林管理の為に渡したもので、谷川を越えてワイヤーを1本渡すところから工事が始まったという。何年か前に東京のテレビ局から1度取材に来たことがある。山道を来る間は威勢がよかったタレントさんは吊り橋に着いてカメラが回り、いざ本番となった時、恐怖のあまり30センチも行けず泣きだした。地元のかしこにある普通の吊り橋ならバイクで渡るが、さすがに私もこの橋は走っては渡れない。
 小学生の息子にこの話をしたら、「じゃあ、真ん中を渡れば?」ときた。おいおい、それは一休さんではないか。