Vol,44-(No.92)

 秋の星空は寂しい。天の川も薄くなり、特徴のある有名な星座もこれといって無い。柿の木の暗いシルエットの向こうには何もない無尽の夜空が広がるだけだ。秋も深まった頃、南の低い空に一つだけぽつんと冷たく光る1等星「フォーマルハウト」を見ることができる。ただし、東京付近の緯度では25度くらいの高度にしかならないので、海浜や平野に住んでいる人でなければ、恐らくはその存在に気が付かないかもしれない。

 秋のひとつ星

 秋の星座の中で1等星はフォーマルハウトだけ。この星が属する『南のうお座』は極端に地味な星座であり、付近には、これといって明るい星もなく、ただ一つフォーマルハウトだけがポツンと寂しげに光っている。独りきりで悲しいけれど、 誰も見てくれる人はいないけれど、それでも光り続ける。

 「ウサギは寂しいと死んでしまう」と聞いたことがある。ウサギはストレスに弱い動物なので、 寂しいという精神状態だけでなく、 いつも面倒をみて構ってあげないと体の不調に気が付きにくい、というのが本当のところだろう。
 孤独な星、フォーマルハウトは天体なので寂しくて死ぬことは無い。しかし毎年、秋になると「大丈夫だろうか?」と、つい南の空を探してしまう。 タイと日本では緯度が約20度も違うので、南の空のフォーマルハウトが日本よりもずいぶん高い位置にある。その光りは誇らしげで、なんとなく嬉しくなった。